レポート 「あの鷹巣町になにがおきたのか」について

私は日本にどのような老人福祉のシステムを築けばよいかを考える力になることを願って、
秋田県鷹巣町に取材した「住民が選択した町の福祉」、さらにその続編となる、
その後の鷹巣町を描いた「問題はこれからです」という映画を、
プロデユーサーの工藤とともに製作してきました。
2本の映画の舞台となった鷹巣町はその素晴しい老人福祉の姿が注目をうけ、
全国的に著名な存在となりました。

鷹巣町は人口2万3千ばかり、北秋田の米代川の流域に広がる町です。
この町が全国的な注目を集めるようになったのは、
1991年、624年勤めたベテラン町長を破って
若い岩川徹氏が町長となり、デンマークに学んだ老人福祉のシステムを
「住民参加」を大切にして築いてきたことにあります。
岩川氏の活動を知った私たちは
1993年から町の動きに注目していましたが、
岩川氏の政策は議会の多数を占める反対勢力に阻止されてなかなか実現しませんでした。
しかし
1995年、ふたたび岩川氏が町長選に挑むことを知り、映画の製作に入ったのでした。
その後
2期町長を勤める間に、岩川氏は町に画期的な福祉の体制をつくり、
鷹巣町は全国的に著名な存在となったのです。
つい先ごろまで、人に知られることもなかった東北の小さな町が、
年間
3000人を超す見学者が訪れる「日本一の福祉の町」といわれるようになりました。

そんななかで2003年の統一地方選挙があり、岩川氏は4期目の町長を目ざしました。
3期目の町長選は無投票だったのですが、こんどは対抗馬が立ちました。
その結果は驚くべきものでした。
有権者数
17千余の町で、3000票以上の差をつけられて、岩川氏が敗北したのです。

鷹巣町の福祉を知る人々のあいだに衝撃が走りました。「一体これはなんだろう」

誰もがそう思いました。私たちも例外ではありません。

「一体何がおきたのか」「これはどういうことなのか」この想像もできなかった事態が
「なぜ起きたのか」ショックでした。
そのことを知るためにふたたび、鷹巣町を訪れました。そうして、
この状況についてのレポートを全国発信しなければと思うようになりました。
それは「住民が選択した町の福祉」「問題はこれからです」を作った私たちの責任でもあると思います。

私たちは岩川派、反岩川派の対立する意見を聞いて歩きました。
意見を聞くことで、今回の選挙がなんであったかを知ることができ、
さらにこの町の体質を表現することができたと思います。
選挙の背景には、いまの日本の不況があり、財政の不安をかかえる自治体、
町村合併をすすめようとする国の政策があります。

私はこの小さな町の姿に、日本の国の姿を重ね合わせて見る思いをしています。

これは「作品」というより「レポート」というべきものですが、
さきの
2本の作品を見てくださったすべての方に見ていただきものです。

                    

(2004.8. 羽田澄子)

     

 「

鷹巣まちの概要(鷹巣町役場 電話0186-62-1111)

1. 北緯40度13分、東経140度22分。秋田県北秋田郡に所在し
面積は325.97平方キロメートル。

2. 人口21,458 男10,169 女11,289 世帯数 7,664

3. 高齢者の状況(平成16年8月1日現在)

65歳以上の高齢者 6,240人(高齢化率 29.08%)

75歳以上の高齢者 2,833人

一人暮らし 975人 (うち105人が特養入居)

4.身体障害者手帳所持者(平成16年4月1日現在)

   総数1,068人 (男 533人 女 535人)

5.一般会計予算(平成16年度当初)

  7,766,058千円

  *老人福祉費は約9.2%(713,593千円)

6.主たる産業

   農業 総農家数 1,741

7.秋田県北秋田地区の核として

   国および県等の官公諸機関が集中し、また高等学校2校をはじめ、
   この地区の教育の中心である。

8.自然と文化

   町の東西に流れる米代川は県三大河川のひとつで、天然アユの宝庫として知られている。
   最近発掘された町内伊勢堂岱の環状列石は、国内最大級で広く注目を集めている。
   又、世界一の大太鼓はあまりにも有名である。

9.交通

   鉄道:JR鷹巣駅は奥羽本線急行停車駅(秋田駅より約1時間30分)

   高速道路:東北縦貫道十和田インターより約1時間(車)

   航空:大館能代空港より町中心部に約10分(車)

                         20048月現在