第十一巻

山中の宿をば 涙とともに発たせ給いて

又奥は奥州佐藤が館(たち)へ着かせ給う

それよりも 三年三月(みとせみつき)と申すには 

十万余騎をもよおして おしてみやこへ のぼらせ給うが  

第十二巻

山中の宿に 着き給い 

又 常盤の御墓へ参らせ給いて よきに回向をなされつつ

いにしえを 思い出させ給いて 涙を流させ給いしが

落つる涙をおしとどめ 檀紙一かさねとりよせ 墨すりながし筆を染め 
山中三百町の所をば 大夫にこそはくだされけれ    

たんだ人には情けあれ 情けは人のためならず 
浮き世はくるまの輪のごとく 巡り巡りてそののちは 
ついに その身の得となる 

これも申すも やどの女房が情けゆえとぞきこえける 
この女房が心中のほど 見る人聞くものおしなべて 
誉めぬものこそなかりけり

(これで12巻すべてでございます。
この詞書がどんな風に語られるのかご期待ください)