第七巻
そののち又 宿へいでさせ給いつつ
いかにや宿のめんめんたち この宿へおく大名のお着きあるが
御やどを知らで尋ぬるなり 教えてたべ とのたまいて
それよりも大夫が宿所に帰らせ給い
また賎しきものと さまをかえ 蓑と笠にて御身をまとい
宿へいでさせ給いつつ いかにや宿のめんめんたち
この宿へ我らが主(しゅう)どののお着きあるが 馬の糠藁(ぬかわら)買わんとて
親の仇を討たんため さまざまに御身を変じ給いて
山中宿をば ふれてまわらせ給いつつ
それよりも 大夫の宿所へ帰らせ給いて 寄せくる仇を待ち給う
かの盗人どもは ひとつところに集まりて 酒盛りしてこそいたりしが
酒(しゅ)もなかばとみえしとき ほりの小六がなかだちして 宿をまわりてたちかえり
第八巻
いかにやめんめん ものを語らば聞き給え
又夕べのところへおく大名とおぼしくて いろよき小袖もあまたあり
あれ押し寄せてとるならば 我らがことは申すに及ばず
孫子の末まで楽々と すぐることはじちやうなり
いざまたよせてとらんという
夜盗(よとう)のもののふどうさは 否と言うものさらになし
みなもっともと同じけり
その夜もようよう夜半過ぎのことなるに ころはよきぞや いざうったて
めんめん うけたまわる と申して
大夫が宿所へ押し寄せ おもての門の打ち破り
なかのでいまで乱れいれども人一人もなかりけり
せめくちの六郎が不思議さよとて かしこをきっと見てみれば
十四か五なるわっぱ一人伏してあり
いかにこれなる小冠者(こかじゃ)め
汝が主はいづくに伏したるぞ 宝物はいづくに積みたるぞ
まっすぐに申すべし すこしも偽るものならば首切らん と言うて脅しける
源(みなもと)このよしきこしめし わざと声を震わし
いやそれまでも候はず 命助けてたび給え
我らが主殿(しゅうどの)はむかいの宿に伏されたり 宝物はこの奥の間にありけるとて
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