「あの鷹巣町の その後」
羽田澄子
私は秋田県鷹巣町で、2本の映画を作っています。「住民が選択した町の福祉」と「問題はこれからです」の2本です。鷹巣町は米代川の流域の人口2万2千ばかりのまちですが、1991年に老人福祉の充実を掲げて、当選した若い岩川町長が、デンマークの福祉に学んだシステムを「住民参加」を大切にして、町に作り上げてきました。しかし、議会に反対勢力が多く、ことはスムースに運びません。
それでも岩川町長は3期12年の間に、社会福祉協議会による24時間の在宅ケア、福祉公社が運営する「ケアタウンたかのす」。----それは、充分な人手。すべて個室でユニットケアの80床の老人保健施設、30床のショートステイ、デイセンターをもつ施設をつくりあげ、鷹巣町は日本一の福祉の町と言われるほどになったのでした。
2本の映画はこの経過を描いています。ところが2003年の統一地方選挙で、4期目を目指した岩川氏は、町村合併をかかげた対立候補に、驚くような大差で敗れたのです。
新しい町長は、町の一般会計からの補助で支えられているレベルの高い福祉を、福祉のやりすぎだといい、福祉を壊しはじめました。2005年3月22日、鷹巣町は消えて北秋田市が誕生しました。鷹巣町の福祉を全国に紹介した私には、この事態を伝える責任があると思って作ったのがこの映画です。「一体この町に何がおきたのか」 私はこの町の政治を見つめることになりました。その驚くような展開とともに、この小さな町の姿に日本の国の姿を見る思いがするのです。
長時間の作品ですが、是非ご覧いただきたいと願っております。
* この映画が完成した後の10月14日に、ケアタウンを運営する「たかのす福祉公社」の理事、監事、評議員、利用者の家族、職員が地元記者団と会見をして、来年度からは市の支援を受けずに運営することを宣言しました。これは大変重要な決断です。この地域の変貌はまだまだ続くでしょう。
* 2005年 / カラー/ 180分/ドキュメンタリー
* 自由工房
* スタッフ
製作 工藤充 協力 北秋田市の皆さん
演出 羽田澄子 大森弥東京大学名誉教授
撮影 宗田喜久松 西尾清 相馬健司 大友信勝龍谷大学教授
録音 滝澤修
ピアノ 高橋アキ
バイオリン 加登萌々子
演出助手 佐藤斗久枝
撮影助手 河戸浩一郎